*さいご* | おそらのうえで。

さいご

こんな時間が
これかもずっとずっと
続けばいいのに。

あたしは君に
言わなきゃいけない。

ねぇ
君は･･･気付いてるの？

*さいご*

「おっす」

息も真っ白になる朝。
君があたしを呼び止めた。

「そんなに見つめられると照れるなぁ」

いきなりのことで
君から目を離せないあたしを
君はそう言って
いつもの笑顔で笑ったんだ。

「なんで･･･いんの？」

「なんでって･･･お前今日誕生日じゃん。
　ほら、遊びに行くべ」

君はあたしの手をひいて
歩きだす。

「あたし用事あんのに･･･」

「いいじゃん。サボれよ」

行かなきゃいけないとこあんのに
君はそんなのおかまいなし。

あたしが君の手を
振りほどけないってこと
君は気付いてるの？

「寒いのにこんなとこ･･･」

君が手をひいて
連れてきてくれたのは
遊園地。

「だってお前、スキなんっしょ？」

君の笑顔に
流される悪いクセ。

「ほら、行くよ」

子どもみたいにはしゃぐ君に

「仕方ないなぁ」

いつしかまた
流されてた。

君との時間は
いつもすぐ過ぎていく。

ずっと続いて欲しいのに
あっという間。

あんなに明るかったのに
もうすっかり真っ暗。

遊園地のイルミネーションが
あたりを照らしてた。

「最後にあれ乗らない？」

そういって
君が指差したのは観覧車。

「ねぇ･･･気付いてる？」

向かい合わせに座って
君の目を
じっと見つめた。

「なに？」

「あたし、あなたがスキよ」

ずっとずっとスキだった。
高校入学と同時に出逢った君とあたし。
いっつも一緒だった。

気が付けば君に恋をして
何回も泣いた。
でも泣いた分だけ
君と笑って
いっぱい幸せなってた。

「知ってる」

にっこり笑って
君はあたしの手を
そっとぎゅっと握り締める。

このまま時間が止まればいいのに。
このままずっとこうして
君と手を繋いで
笑っていたいのに

でもね
言わなきゃいけないんだ。

「ねぇ気付いてる？」

君のためにも

「ん？」

あたしのためにも。

「君は昨日･･
　死んじゃったんだよ？」

　
昨日の夕方
君は居眠り運転のトラックから
子ども守って死んじゃった。
今日はね
そんな君の家に行かなきゃ
いけなかったんだよ？

でも君らしいね。

握り締めた手が冷たくて
君が目の前にいるのに
吐息を感じることも
なにも出来ない。

「交通事故で･･･死んじゃったんだよ･･･？」

溢れる涙を
とめることが出来なくて
君の手を
ぎゅっと強く握り締める。

「ごめん」

微笑む君が

「ごめんな」

またあたしの
苦しめる。

「どうしても逢いたかったんだ」

君はぎゅっと
あたしを抱き寄せて

「あいしてる」

耳元でそう
囁いた。

「誕生日おめでと」

そういって
あたしの耳につけてくれた
誕生石のピアス。

「しあわせになって」

君はゆっくりと
あたしの涙を拭ったんだ。

気が付けばあたしは
自分の家の前にいて
どうやってかえってきたのか
よく覚えてない。

ただあたしの耳には
君がくれたピアスと

君の声が残ってる。

「ねぇ･･･スキよ？」

そらにむかって呟いたあたしの声
君には届く？

「スキなの」

もう君が
涙を拭ってくれたりしない。

「す･･･きぃ･･･」

声を振り絞って
言葉じゃ言い表せないキモチを
吐き捨てる。

受け止めなきゃいけない現実が
あまりにも大きくて
あたしを
今にも押しつぶしそう。

部屋に飾られた
君の写真は
あの時と同じ笑顔。

君と過ごした
最初で最後の誕生日。

君がくれた
プレゼント。

君が教えてくれた
君のキモチ。

ねぇ大切にするから

キモチの整理がつくまでは

ココロのずっとずっと奥で

眠ってて？

君のこと
笑って話せる日まで。

人が死んでしまう話はきらい。
基本的に書かないです。
これできっと２作目？
しかも終わり方、ちょっと前のと
似てるような気がしてたまりません(笑)

好きな人に
最後まで好きだと伝えられないのは
きっとずっとココロに残る。
後悔ってカタチで。

だから私は
想ったことは伝えてしまいたい。

いや、相手が不慮の事故で
亡くなることなんか考えてないよ？

でもいつなにがあって
キモチ伝えられなくなるかなんか
わからんやん。

だからちゃんと
キモチは伝えておかんとあかんかなって
思う、今日この頃でした。

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